スケルトン競技に必要な用具についてご紹介します。
全身タイツを着て頭にヘルメットをかぶり、体より小さなそりに乗っている状態で
時速100キロ以上で滑っているところを見ると危なくないのかな?と思ってしまいますね。
実際に選手がどのような用具を使用しているのかアイテムごとにご案内します。

図のようにうつ伏せで、両肩と両膝がそりの四隅にあたるように乗ります。
気を付け!の姿勢でわきの下にハンドルを体温計をはさむようにして乗ります。
そりの四隅にバンパーと言われる、突起がついていますので、壁にぶつかっても直接身体に当たることはありません。
ハンドルを掴むときに肘がバンパーよりも外にはみ出してしまうと、
壁にぶつかったときに肘を打つことになりますので、腕はまっすぐ伸ばしましょう。
頭はできるだけ低くしたほうがそりが安定しますし、風の抵抗も少なくなります。
ヘルメットにはチンガードがついていますので、こんなに低い姿勢をとってもあごを怪我することはありません。

図のように四隅に鉄製のバンパーがあります。壁にぶつかるときはまずここが壁にぶつかります。
丸棒状のものですが、ぶつかることが多いとどんどんすり減ります。そり本体からどのぐらい外にはみだしていいかや、
太さのルールも細かく決まっています。
そりは、鉄のフレームと、鉄の板などで作られていますので、直接うつ伏せに乗ると痛いです。
その為、身体を乗せている部分には自分で痛くないようにゴムなど、
やわらかい素材のものを張ったりしてクッションにします。
空気抵抗を考えると薄く仕上げるほうがいいですね。
また、総重量にも影響しますので、考慮しながらオリジナルにつくっていきます。
とてもシンプルな作りに驚かれるかもしれませんね。


実際に選手が使用しているそりです。
形がいろいろですね。
とはいえ、そり本体とランナーはほぼ共通の規格に基づいて作られています。
見た目で違ってみえる部分は、カウルカバーの差がおおきいのです。
デザインもいろいろで最近ではかなりグラフィカルなそりに
乗っている選手も多くなりました。

長さ約1m、太さ約16㎜の鋼鉄製の丸棒です。
特徴は、ランナー中央部から後部にかけて掘られている2本の溝です。
この溝がスキーで言うエッジングの役目をし左右に曲げやすくします。

※スケルトンのIBSF大会ではUVEXの特製ヘルメットが主流として使用されていますが、
国内の状況を考慮して、安全基準に適合した市販のフルフェイスヘルメット(あごあて付き)は、
過度の空気力学的部品がついていなければ、当面の間、国内大会では使用可とします。
(日本ボブスレーリュージュ連盟HPより抜粋)

近年海外の大会ではスケルトン専用のヘルメットを使用しているようですが
なかなか手に入りにくいため、主に使用されているのは
本体はスキーのダウンヒル用やスカイダイビング用などです。
シールド(全面の透明部分)は、プラ板をサイズに合わせて切り、
ヘルメットの隙間にはめ込んだりしています。
なかにはオリジナルで作っちゃった!という選手もいるぐらい、神経質になる部分でもあります。
チンガードはあごをカバーするものです。
ヘルメットをかぶることは、安全性を保つ為にルール上義務付けられているのですが、
滑走中は、その重さ、フィット感、シールドやチンガードの角度や、
出っ張り具合が大変”気になる”ので、各選手が自分なりに工夫をしています。
上の写真はスキーダウンヒル用を改良したもので、シールドをつけたり、
チンガードを削ったりしています。下は海外で購入した、スカイダイビング用ですが、
こちらはシールドが既に標準装備され、かぶったままで開閉できます。

スケルトン用というものも存在しているのですが、ほとんど流通しないため入手困難なのが現状です。
その為、代用しているのがスピードスケート用や水泳用などのウエアになります。
いわゆる全身タイツです。伸縮性と空気抵抗に配慮しているものがのぞましいです。
素材によってはルール上許されないものもありますので、レースで使用される前には必ず審判に確認してください。
やはり国際レースになると各国が工夫を凝らした素材で専用スーツなども作ってきますので、用具の開発も課題になります。

上の画像は、スケルトン専用スパイクです。
シューズの底に剣山のようなものがついています。これは氷の上で滑らずに走る為です。
また甲部分にはカバーがついていてファスナーで靴紐の部分を覆うことができます。これは雪などの水分を侵入させない工夫です。
このスパイクが国際ルール上義務付けられたのですが、これは現在日本国内ではほとんど入手困難です。スポーツ店に行っても買えません。
そのため、本来は日本選手権は国際ルールに則ってレースが行われるのですが、持っていない選手、
いえ、手に入れることが出来ない選手が大勢いる為、統一出来ないのが現実です。国内での安定供給は課題となっています。
下の画像は陸上競技用のスパイクです。
ピンは規定の本数、長さに設定しなければいけませんので、陸上スパイクを購入される場合は、
ピンが取り替え可能なものかどうかの注意が必要です。(既に埋め込まれ取り替えできない商品もあります。)
国際レースでは既に使用不可となっておりますが、国内では、供給が間に合っていないことからも、どちらでもいいことになっています。
ピンは先端がとがっていないと氷の上では滑ってしまう為、やすりで研いだり、とがったものを購入しています。

グローブは素手でなければ、たとえば軍手などでも何でも構わないのですが、
実際に選手が使用しているものとしては、
野球用、サッカーキーパー用、スノーボードハーフパイプ用、マウンテンバイク用、
モトクロス用など、様々です。選ぶポイントは、スタート時、そりをつかんで押すこと、
滑走時にはハンドルを微妙に握ることも操作につながる事、
ゴールラインを過ぎたら手のひらをついてブレーキに使う事などを考慮して選択すると良いかと思います。
寒さ対策という観点を心配されることもあるのですが、
直前まで選手が待機できる「スタートハウス」という
暖かいペースがありますし、滑走は約1分程度ですし、
ゴール後は暖かい服を用意しておきすぐに着用できますので、
個人的な感想ですが、あまり考慮する必要はないように思います。

右の画像はスキーダウンヒル用のインナーウエアです。
腕の外側にパットが入っています。これはスケルトンにおいては便利なものです。
なぜなら、スケルトンは「気をつけ」の姿勢でそりに乗るのですが、
時々壁に激突した衝撃で二の腕や、手首、肩などをぶつける事があるので、その防具となります。
これの上に全身スーツを着ればいいですね。
ただ、こちらはあくまでもインナーなので、お金をかけたくないという選手も多く、
代用としてキャンプマットや、お風呂マットなどのウレタン素材や、ゴム素材のものを切って、
必要に応じてレーシングスーツの間に挟んでいる選手も多いです。
ちなみに私は銀色のキャンプマットを切って使っていました。
薄くて必要な大きさに簡単に切れるので便利です。


これは、氷のコースを歩く、トラックウォークの際に使います。
滑走する前にイメージを作る為、コース内を歩くことができる時間があります。
コースは大変滑りやすいため、転んで怪我しないように軽アイゼンのようなものをはきます。
ちなみにこの画像は”わかさぎつり”用のもので、つり道具屋さんで購入しました。これは優れものです。
雪山登山用のアイゼンは刃が大きすぎてトラックの氷が割れてしまったりして、コースを痛めてしまいますので、使用しないでください。